「明日の風」研究活動の歩み

研究活動

※注 約30年以上前に書いた記事です。

■昭和56年度の研究活動

結成当初、会員のほとんどが未経験者であった為、まさにゼロの状態から出発した。そして、「研究」というものも、本作品のスタッフ養成の意味合いから必要であった。だが、この頃はまさに基本的なことを学ぶ時代であり、この「学習」をいかに効果的に、短期間に行うかが、当面の課題であった。そこで検討の結果、導入されたのが「部門別研究班制」であった。
具体的には、
(1)シナリオ研究班・・・脚本家の要請
(2)画像研究班・・・カメラマン・エディター等のスタッフ養成
(3)効果研究班・・・美術・音響スタッフの育成、及び特撮の研究
という三つの班に分かれて学習及び研究を行った。この頃の特色としては、上級生・下級生を問わず共に学習していくという時代であったことである。したがって、班長も技術的指導者の立場ではなく、単にまとめ役として存在するものであった。では、どのようにして研究が行われたかというと、画像、効果班に関していえば、ゼミナール形式で、各自が与えられたテーマについて、例えば「アングルとは何か」「フレームとは何か」というような大きなテーマについて、映画に関する図書等で調べてくるといった方法をとっていたのである。
では、このような研究活動の結果、実際にどのような成果があったかというと、
(1)数本のシナリオが執筆され、ストックされたこと。これらのシナリオが翌年の本作の候補作にもなって企画の選択幅を広げたことは、大きな成果であった。
(2)基本的な技術の研究がなされたこと。そして、レポートが蓄積されたこと。このレポートの蓄積が、その後の学習活動の拠り所となった。

■昭和57年度の研究活動

前年より「部門別研究班制」を継承。しかし、そのまま継承したわけではなく、第一回本作品の反省に基づいて次のように改訂された。
(1)役者の演技がまずかった、という反省から演技指導の出来る人材を育成する為、シナリオ研究班をシナリオ・演出研究班と改訂。
(2)アフレコの録音状態が悪かった、という反省から音響は独立して専門的に研究すべきであるとして新たに音響研究班を増設。
よって、57年度の研究組織は次のようになった。
(1)シナリオ・演出研究班
(2)画像研究班
(3)効果研究班
(4)音響研究班
では次にこの年の研究成果について。
(1)画像班において、映像の基礎的理論と技術の学習が行われたこと。この「学習」とは、前年度のレポートを基にして行われた。中でも特質することは、「コンテのシミュレーション」による映像演出の学習が効果的であったことである。
(2)効果班において、特殊メイクの研究が進み、第二回本作品における「老け役」メイクとして結実したこと。
(3)音響班において、録音技術の改善はみられなかったものの、効果音の収集が積極的に行われ、第二回本作品の効果音の幅を広げたこと。
また、大きな特色として、本作におけるスタッフの編成が容易に出来たということである。つまり、各研究班をそのままスタッフに組み込むことが出来、各部門ごとにチーフを設けることが出来たのである。
以上のような成果は得られたものの、全体を通してみれば、期待されたほどの成果を得るには至らなかった。それは、研究活動の枠組みとなっている「部門別研究班制」そのものに限界があったためである。つまり、会員にしてみれば、カメラマンや録音技術といった専門家になるために入会したわけでなく、様々なことを知りたい、やってみたいといった会員の研究活動に対する意識の多様化に、スタッフ養成を目的とした制度が対応出来なくなったというわけなのである。このような制度的欠陥が原因となって「会員の研究班離れ」が生じることになり、予想以上の成果を上げることが出来なかったのである。

■昭和58年度の研究活動

前年度の制度的結果を一掃するという意味で、「研究班制廃止」という方針が打ち出された。そして、それまでの研究班制に代わるものとして「学習会の確立」が提唱された。それは、ミーティングの中に学習会を組み込み、全員参加を原則として、基礎的理論・技術を学習していこうというものであった。このように「学習」に関しては学習会という受け皿があったため、基礎的技術の継承は維持できたのだが、一方「研究」に関しては、確固たる受け皿がないまま見切り発車の状態であった為、全体としての研究成果は乏しいものとなった。
ところで、新たに設けられた「学習会」は、技術的指導者による講義という形式をとったが、当初は、学習の拠り所となるべき教材が整備されていなかったために、体系的な指導が出来なかった。そこで後期には、教材となる「基礎学習資料(初級編)」が編纂されたのである。その内容は、昭和56年、昭和57年の研究班レポートを基に、基礎的な資料をまとめたものであった。この「テキスト」の出現によって能率的な学習ができるようになったが、反面、学ぶ側に期待以上の学習意欲が高まらず、また全員参加の学習会は困難であり、立ち遅れる者も現れて、実質的な成果が上がらなかったのである。
最後に、有志による自主的研究成果について列記しておく。
(1)イメージフィルムにおいて「疑似夜間撮影」が成功したこと。
(2)金魚鉢パック攻め方式・疑似ステレオ方式が開発されたこと。これは第三回本作品における音響技術の向上として結実した。

■昭和59年度の研究活動

前年度の「研究停滞期」から脱却し活発な研究活動を行うために、新たな枠組みとして「テーマ別研究班制」が導入された。これは、全体を三つの班に分け、各班ごとに自主的な研究テーマを決めて、研究活動を行っていこうというもので、
具体的には、次のような研究班が設けられた。
(1)A班・・・特撮領域の開発について
(2)B班・・・同時録音の実現化について
(3)C班・・・照明に関する理論の体型化について
次に、研究成果についてあげると
(1)A班におけるオーバーラップ・スーパーインポーズの実現
(2)C班における疑似夜間撮影の技術的向上、露出値のマニュアル調整についての理論体系化への着手。
その他、有志による「一コマ撮影」「フラッシュアウト」「フィルム加工による特殊効果」の成功といった成果が挙げられる。
しかし、「研究停滞期」を過ごしてきた人々が技術的指導者の立場に立ったために、意欲的な姿勢とは裏腹に、グループ総体としてのレベルが低下していた。 このため、班長の技術的指導力の不足から、下級生に対する充分な指導ができなかった。この種のことはイメージフィルムの制作においても顕著にあらわれ、、「技術的指導者の育成」が性急に必要であると叫ばれた。
最後に学習面についてであるが、これは前年度の「学習会」を継承することになり、その不足分を班会で補うことになった。そこで以前から課題になっていた学習意欲の向上について再検討され、対応策として「認定試験制度」が試みられることになった。この試みは予想以上に学習意欲を向上させた。

【今後の課題】
これまで述べてきたように継承すべき技術的内容が年々増加してきており、それをどのように将来へ伝えていくかが今後の大きな課題であろう。そして、技術的指導者の育成と共に、監督や脚本家としった中軸スタッフの育成が問題となってきている。また、研究面においては、特に「同時録音」の実用化へ向けての研究が当面の大きな課題であるといえよう。

文責:瀬畑 新治

ページの先頭へ